五行色体表は、東洋医学の基本理論である「五行学説」に基づき、木・火・土・金・水の五行に臓腑・五味・五季・色・感覚器などを対応させた体系的な一覧表です。鍼灸や漢方、リハビリテーション分野でも活用される重要な知識ですが、その情報量の多さや独特な概念ゆえに、学習時に混乱しやすいポイントでもあります。
この記事では、五行の基本特性から対応項目の覚え方、相生・相克の関係、そして臨床での活用例までを網羅的に解説。語呂合わせや図解も交えて整理することで、視覚的・言語的に記憶を定着させられる構成としています。試験対策としても、臨床現場での判断ツールとしても使える内容になっています。
このページでわかること
- 五行(木・火・土・金・水)の基本的な意味と特徴
- 五行色体表の全体構造と各行に対応する項目
- 相生・相克の法則とそれを活かした判断法
- 五行色体表を臨床・鍼灸・リハビリに応用する方法
- 試験にも役立つ語呂合わせ・視覚記憶のコツ
五行学説と五行色体表の基礎

五行学説とは、自然界のすべての現象や人体の状態を「木・火・土・金・水」という5つの要素に分類して理解する東洋医学の理論です。この理論をベースに、臓腑・季節・色・味・感覚器などを分類・対応づけたのが「五行色体表」です。
五行は単なる分類ではなく、互いに影響し合う「動的な関係性」を持つのが特徴です。この章では、まず各五行の意味と働きを確認し、その関係性(相生・相克)を図解で押さえていきます。
五行とは何か?木・火・土・金・水の意味
五行は自然界の循環を表現するための基本カテゴリであり、それぞれの性質を知ることで東洋医学的な診断や治療に応用できます。
- 木(もく)
↳成長・発展・拡張を象徴。春や筋・目・酸味と関係 - 火(か)
↳熱・活動・上昇を象徴。夏や血脈・舌・苦味と関係 - 土(ど)
↳安定・滋養・中心を象徴。土用・脾胃・甘味と関係 - 金(ごん)
↳収斂・清潔・変化を象徴。秋・肺・鼻・辛味と関係 - 水(すい)
↳冷・貯蔵・下降を象徴。冬・腎・耳・鹹味と関係
これらの性質は人間の身体や感覚、臓器の働きにも反映されており、それぞれの不調時に注目すべき視点となります。
五行の基本法則:相生・相克を押さえる
五行の理解に欠かせないのが、「相生(そうせい)」と「相克(そうこく)」という二つの関係性です。これにより、五行間のエネルギーの流れや抑制のバランスを捉えることができます。
| 関係の種類 | 循環 | 意味 |
|---|---|---|
| 相生 | 木 → 火 → 土 → 金 → 水 → 木(循環) | 育て合う関係(例:木は火を生む) |
| 相克 | 木 → 土 → 水 → 火 → 金 → 木(制御) | 抑制し合う関係(例:木は土を押さえる) |
以下の図も参考になります。
緑の実線=相生(育てる関係)
赤の点線=相克(抑える関係)
「育てる」力と「抑える」力のバランスによって、体調の変化や症状の現れ方を読み解くのが五行診断の基本となります。
五行色体表の一覧と対応項目
五行色体表は、東洋医学のあらゆる概念を整理する上での「中心的なツール」です。木・火・土・金・水のそれぞれに、臓腑、季節、味、色、感覚器などが対応しています。試験でも問われやすく、臨床現場でも「どの五行に問題があるか」を見極める指針として使われます。
ここでは、覚えやすく整理された一覧表と、記憶に残りやすい語呂合わせを紹介します。
木行:肝・胆・目・春・酸味・青色等
| 分類 | 木行の対応 |
|---|---|
| 五臓 | 肝 |
| 五腑 | 胆 |
| 五季 | 春 |
| 五味 | 酸味 |
| 五色 | 青 |
| 五官 | 目 |
| 体の部位 | 筋 |
語呂:「春に目が青くなり、酸っぱくて肝がきく」
肝=感情の高ぶり、怒りなどとも関連する行です。
火行:心・小腸・舌・夏・苦味・赤色等
| 分類 | 火行の対応 |
|---|---|
| 五臓 | 心 |
| 五腑 | 小腸 |
| 五季 | 夏 |
| 五味 | 苦味 |
| 五色 | 赤 |
| 五官 | 舌 |
| 体の部位 | 脈 |
語呂:「夏に舌が赤くて苦い、心がドキドキ」
火行=精神や意識の乱れと関係することが多いです。
土行:脾・胃・唇/口・土用・甘味・黄色等
| 分類 | 土行の対応 |
|---|---|
| 五臓 | 脾 |
| 五腑 | 胃 |
| 五季 | 土用/長夏 |
| 五味 | 甘味 |
| 五色 | 黄 |
| 五官 | 口(唇) |
| 体の部位 | 肉 |
語呂:「黄色い甘い口でよく食べる、脾と胃が要」
土行=消化吸収・中心の調整役として重要です。
金行:肺・大腸・鼻・秋・辛味・白色等
| 分類 | 金行の対応 |
|---|---|
| 五臓 | 肺 |
| 五腑 | 大腸 |
| 五季 | 秋 |
| 五味 | 辛味 |
| 五色 | 白 |
| 五官 | 鼻 |
| 体の部位 | 皮毛 |
語呂:「秋の白い鼻水、辛くて肺がキューッ」
金行=呼吸器系や皮膚との関連が強い。
水行:腎・膀胱・耳・冬・鹹味・黒色等
| 分類 | 水行の対応 |
|---|---|
| 五臓 | 腎 |
| 五腑 | 膀胱 |
| 五季 | 冬 |
| 五味 | 鹹(塩味) |
| 五色 | 黒 |
| 五官 | 耳 |
| 体の部位 | 骨 |
語呂:「冬に耳が冷えて黒く、しょっぱくて腎にくる」
水行=老化・成長・生殖との関係が深い要素です。
五行色体表を臨床・鍼灸・リハビリでどう活かすか
五行色体表は、単なる暗記項目ではなく、実際の診療や施術にも活用できる分析ツールです。臓腑や季節との関係性を見ながら、どの五行に偏りがあるかを把握すれば、治療方針の選定にもつながります。
この章では、症状の分類やセルフチェック、季節や食事と関連させた応用、さらに国家試験に出やすい重要項目についても紹介します。
症状から五行を仮定するセルフチェック法
日常的な症状も、五行色体表の視点から分類することで、弱っている臓腑の傾向や関連する感覚器・季節などが見えてきます。
- 目の疲れ・イライラ・筋のけいれん → 木行(肝)
- 動悸・不眠・舌の違和感 → 火行(心)
- 食欲不振・唇の荒れ・だるさ → 土行(脾)
- 咳・鼻づまり・皮膚の乾燥 → 金行(肺)
- むくみ・耳鳴り・冷え → 水行(腎)
これをベースに、五行の「過不足」を仮定し、補う治療(補法)や抑える治療(瀉法)を計画するのが東洋医学の診断技術です。
味・色・季節の養生と五行の関連付け
五行の各要素には、季節・色・味といった自然界の属性も対応しています。これを日常の養生やセルフケアに活用することで、季節ごとの体調管理や施術の補助になります。
| 五行 | 季節 | 味 | 色 | おすすめの養生 |
|---|---|---|---|---|
| 木 | 春 | 酸味 | 青 | 酸味を適度にとり、筋をやわらげる |
| 火 | 夏 | 苦味 | 赤 | 心を静める食材(苦瓜など)をとる |
| 土 | 土用/長夏 | 甘味 | 黄 | 脾を労わる温かいスープ・発酵食品 |
| 金 | 秋 | 辛味 | 白 | 乾燥対策に潤いのある食事をとる |
| 水 | 冬 | 鹹味(塩味) | 黒 | 体を冷やさず腎を温める鍋など |
このように、季節・味・色を五行と関連づけて生活に取り入れることで、未病予防やセルフケアにも活用できます。
五行のアンバランスが示す治療方針と応用例
東洋医学では、症状を「気・血・水」の流れや五行のバランスの乱れとして捉えます。以下は、五行のアンバランスと治療への応用例です。
- 木が強すぎる(怒り・頭痛)
↳肝の働きを抑える:足の厥陰肝経の瀉法など - 火が弱い(顔色が悪い・舌の色が白)
↳心の陽を補う:心包経の灸刺激など - 土が弱い(疲れ・食欲不振)
↳脾胃を補う:足の太陰脾経・陽明胃経に補法 - 金が強すぎる(咳・過敏反応)
↳肺の働きを整える:尺沢や太淵の調整 - 水が弱い(足腰のだるさ・頻尿)
↳腎を補う:腎兪、太谿などの補法
鍼灸や漢方では、このように五行の状態から「どこにアプローチするか」を逆算して治療を組み立てます。
試験に出やすい出題ポイントと対策法
五行色体表に関する問題は、国家試験や東洋医学の筆記試験で繰り返し出題されています。以下は、特に問われやすい部分です。
- 「五臓と五官の対応」
↳肝=目、心=舌、脾=口、肺=鼻、腎=耳 - 「五行と季節の組み合わせ」
↳春=木、夏=火、長夏=土、秋=金、冬=水 - 「相生・相克の順番」
↳木生火、木克土などの因果関係を問う選択肢 - 「五味と臓腑」
↳肝=酸、心=苦、脾=甘、肺=辛、腎=鹹
対策法としては「語呂合わせ」「表での繰り返し確認」「図による相関の可視化」が効果的です。特に相生・相克は図を見ながら方向性と関係を体に覚えさせるのがポイントです。
まとめ|五行色体表を覚えて診断・治療・試験に活かす
この記事では、五行学説の基本から、五行色体表の構造、そして臨床や試験での実践的な活用法までを解説しました。木・火・土・金・水という自然の要素に、五臓・五腑・五味・五色・五季などが対応し、それらが相生・相克という法則のもとでバランスを取っていることがわかります。
また、視覚的に整理された表や語呂合わせを用いることで、複雑な情報でも覚えやすく、試験対策としても非常に効果的です。特に出題頻度の高いポイントを押さえておくことで、確実な得点源になります。
臨床の場では、目に見えない体調のバランスを五行で捉え、「どの行が過剰か、または不足しているか」を仮定して、施術方針のヒントとすることが可能です。養生やセルフケアにも応用でき、患者への説明ツールとしても役立ちます。
五行色体表は、暗記して終わりではなく、使いこなすことで本領を発揮する道具です。基本を押さえ、繰り返し見直しながら、臨床や試験に活かしていきましょう。



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