脳神経は12対あり、それぞれが「感覚・運動・混合」のどれに属するかを理解するのは試験対策において不可欠です。なかでも運動神経に分類される神経は、支配筋や麻痺の症状と直結する重要な知識。しかし、番号と名称が複雑に入り組んでいるため、暗記に苦手意識を持つ人も多いのではないでしょうか。
この記事では、運動神経として分類される脳神経の見分け方や覚え方のコツを、語呂合わせや分類表を使ってわかりやすく解説します。混乱しがちな脳神経の全体像をシンプルに整理し、国家試験や定期テストで得点につながる記憶法を手に入れましょう。
このページでわかること
- 運動神経に分類される脳神経の番号と名前
- 各運動神経の支配筋と主な働き
- 語呂合わせ・数字・擬人化による覚え方
- 感覚・混合神経との違いを見分ける方法
- 試験で狙われる脳神経の分類ポイント
脳神経の基本と分類をおさらい

脳神経は、脳から直接出る末梢神経で、全部で12対(24本)あります。それぞれに名前と番号が割り振られており、顔や頭部の感覚・運動・内臓機能の制御など、非常に多様な役割を担っています。脊髄神経と違って一部の特殊感覚(視覚・聴覚・嗅覚)を含む点も特徴的です。
脳神経を分類する上で最も重要なのが、「感覚神経・運動神経・混合神経」という3つの機能的分類です。これを理解しておくと、各神経の働きや病態もイメージしやすくなります。
12対の脳神経の分類:感覚・運動・混合
脳神経はその機能によって大きく3つに分かれます。
| 分類 | 番号と名称 | 主な機能 |
|---|---|---|
| 感覚神経 | Ⅰ 嗅神経 Ⅱ 視神経 Ⅷ 聴神経 | 嗅覚・視覚・聴覚などの感覚情報の伝達 |
| 運動神経 | Ⅲ 動眼神経 Ⅳ 滑車神経 Ⅵ 外転神経 Ⅺ 副神経 Ⅻ 舌下神経 | 眼球運動、舌や首の筋肉の運動制御 |
| 混合神経 | Ⅴ 三叉神経 Ⅶ 顔面神経 Ⅸ 舌咽神経 Ⅹ 迷走神経 | 感覚と運動の両方を担う(例:咀嚼、味覚、顔面運動) |
このように分類して整理すると、覚えるべき神経が一気に明確になります。運動神経に限定して学習を進めることで、効率的に知識を定着させることができます。
運動神経に分類される脳神経とは?
12対ある脳神経のうち、明確に「運動神経」に分類されるのは以下の5つです。これらは筋肉を動かすことに特化しており、それぞれが異なる運動機能を担っています。
- 第3脳神経:動眼神経
↳眼球の運動・瞳孔の収縮に関与 - 第4脳神経:滑車神経
↳上斜筋を支配し、眼球を下・外側に回旋させる - 第6脳神経:外転神経
↳外側直筋を支配し、眼球を外側に動かす - 第11脳神経:副神経
↳胸鎖乳突筋と僧帽筋を支配し、首と肩の動きを制御 - 第12脳神経:舌下神経
↳舌の筋肉を支配し、舌の運動を司る
これら5つの神経は、感覚情報を伝える機能は持たず、筋運動に特化しているため、「純粋な運動神経」として分類されます。試験ではこの5つを明確に覚えておくことがポイントになります。
運動神経だけを覚える語呂合わせとコツ
脳神経は数も多く、機能も多様なため、分類して覚えることが非常に重要です。運動神経に絞って覚えるなら、語呂合わせや数字の並びを活用するのが効果的です。ここでは、試験でも即答できるようになる記憶法を紹介します。
語呂合わせ:「動かす滑車は外で副舌」
運動神経に分類される脳神経5つを一気に覚える語呂がこちら:
「動かす滑車は外で副舌」
- 動 → 動眼神経(Ⅲ)
- 滑車 → 滑車神経(Ⅳ)
- 外 → 外転神経(Ⅵ)
- 副 → 副神経(Ⅺ)
- 舌 → 舌下神経(Ⅻ)
語呂の中に「動」「滑車」「外」「副」「舌」と、それぞれの特徴的な言葉を盛り込むことで、自然に対応づけができます。
数字で覚える:「3・4・6・11・12」
語呂と一緒に、数字でも記憶しておくと選択肢問題に強くなります。以下の数字を順に唱えるのがコツです。
「3・4・6・11・12」→「さしろく いいに」
視覚的に並べると、次のようになります。
- 第3 → 動眼神経
- 第4 → 滑車神経
- 第6 → 外転神経
- 第11 → 副神経
- 第12 → 舌下神経
語呂とセットで覚えることで、試験での再現性が高くなります。
運動神経チームとして覚える擬人化法
記憶が苦手な人におすすめなのが、5つの運動神経を「筋トレ部のメンバー」として擬人化して覚える方法です。
- 動眼くん(第3):目の運動を担当する主将
- 滑車くん(第4):目を下に動かすサブリーダー
- 外転くん(第6):視線を外に向けるクール担当
- 副くん(第11):首・肩担当の筋肉番長
- 舌下くん(第12):滑舌担当、発声練習で大活躍
筋肉を動かすという共通点を持つ5人のキャラをイメージすることで、記憶に定着しやすくなります。
試験での出題例
- 問題例①:以下のうち、「運動神経」に分類される脳神経はどれか?
- 三叉神経
- 舌咽神経
- 動眼神経
- 迷走神経
↳正解:3. 動眼神経
- 問題例②:以下の脳神経のうち、「感覚・運動の両方を持たない」のはどれか?
- 顔面神経
- 副神経
- 三叉神経
- 舌咽神経
↳正解:2. 副神経(純粋な運動神経)
- 問題例③:外側直筋を支配し、眼球の外転を担う脳神経はどれか?
- 滑車神経
- 外転神経
- 動眼神経
- 舌下神経
↳正解:2. 外転神経
こうした選択問題では「分類を知っているか」が鍵になります。語呂や数字と一緒に、支配筋もリンクして覚えるようにしましょう。
各運動神経の機能と支配筋
運動神経として分類される5つの脳神経は、それぞれ異なる筋肉を支配し、明確な運動機能を持っています。ここでは、それぞれの神経がどの筋肉に作用するのか、何を動かすのかを整理します。試験では「支配筋+機能のセット」が問われることが多いため、確認しておきましょう。
動眼神経(第3脳神経)の運動機能
- 支配筋:上直筋、下直筋、内側直筋、下斜筋、眼瞼挙筋
- 主な機能:眼球の上下・内側の運動、まぶたの挙上
- 副交感神経成分:瞳孔括約筋、毛様体筋
試験対策ポイント
- 「瞳孔縮小」や「まぶたが下がる(眼瞼下垂)」は動眼神経麻痺で起こる
- 「副交感神経も含む」ことを聞かれることがある
滑車神経(第4脳神経)の運動機能
- 支配筋:上斜筋
- 主な機能:眼球を下外側に動かす(内下方向への回旋)
試験対策ポイント
- 「唯一、背側から出る脳神経」であることが問われることもある
- 上斜筋のみを支配する「単一筋支配」も重要
外転神経(第6脳神経)の運動機能
- 支配筋:外側直筋
- 主な機能:眼球を外側(外転)に動かす
試験対策ポイント
- 「外転神経麻痺では複視(ダブルビジョン)」が起こる
- 「正面を向いているときに眼が内側に偏位している」所見に要注意
副神経(第11脳神経)の運動機能
- 支配筋:胸鎖乳突筋、僧帽筋
- 主な機能:首を回す、肩をすくめる
試験対策ポイント
- 「肩を上げられない」「顔を反対側に向けられない」症状がヒントになる
- 医療面接や運動検査で用いられる
舌下神経(第12脳神経)の運動機能
- 支配筋:舌筋群(舌骨上筋を除く)
- 主な機能:舌の動き、発音・咀嚼・嚥下に関与
試験対策ポイント
- 「舌下神経麻痺では、舌を出すと麻痺側に偏る」ことが頻出
- 発音障害や嚥下障害と組み合わせて出題されやすい
運動神経と他の分類との比較
脳神経の理解には「運動・感覚・混合」という分類の区別が欠かせません。運動神経だけを覚えても、他の分類との違いを把握していないと選択肢で迷いやすくなります。ここでは、感覚神経・混合神経と運動神経を明確に比較して、記憶を整理しましょう。
混合神経・感覚神経との違いを表で整理
以下の表は、12対の脳神経を機能別に分類したものです。
| 分類 | 脳神経(番号と名称) | 主な機能 |
|---|---|---|
| 感覚神経 | Ⅰ 嗅神経 Ⅱ 視神経 Ⅷ 聴神経 | 嗅覚、視覚、聴覚・平衡感覚など |
| 運動神経 | Ⅲ 動眼神経 Ⅳ 滑車神経 Ⅵ 外転神経 Ⅺ 副神経 Ⅻ 舌下神経 | 眼球運動、舌・首・肩の運動 |
| 混合神経 | Ⅴ 三叉神経 Ⅶ 顔面神経 Ⅸ 舌咽神経 Ⅹ 迷走神経 | 感覚と運動の両方を兼ねる(顔面、咀嚼、味覚、内臓反射など) |
この分類をもとに、機能ごとにグルーピングして覚えると、どの神経が何に関与しているかを見失いにくくなります。
試験に出やすいポイントの確認
試験でよく問われるポイントをまとめると以下の通りです。
- 運動神経に分類される神経は?(選択肢で判別)
- 眼球運動に関与する3神経(Ⅲ・Ⅳ・Ⅵ)を識別できるか
- 副神経が支配する筋(僧帽筋・胸鎖乳突筋)を答えられるか
- 舌下神経の障害で舌がどちらに偏るかを判断できるか
- 混合神経と運動神経の違いを文脈から見抜けるか
これらは選択肢問題・図説問題ともに頻出です。分類・機能・障害時の所見をセットで覚えることで、より正確な判断ができるようになります。
まとめ|脳神経の運動神経を効率よく暗記しよう
脳神経の中で「運動神経」に分類されるのは、第3(動眼神経)、第4(滑車神経)、第6(外転神経)、第11(副神経)、第12(舌下神経)の5つです。それぞれが特定の筋肉を支配し、眼球・首・舌といった明確な運動機能を持つため、分類とセットで覚えるのが重要です。
「動かす滑車は外で副舌」や「3・4・6・11・12」などの語呂合わせや数字パターンを活用することで、暗記の負担を軽減しつつ、試験でも即座に思い出せるようになります。また、支配筋や障害時の臨床所見も一緒に覚えておくと、臨床問題にも強くなれます。
全12対の脳神経をただ丸暗記するのではなく、分類で整理し、使える知識にすることが合格への近道です。苦手意識を持たず、少しずつ繰り返して記憶を深めていきましょう。



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