腹部大動脈の分岐を理解!順番・椎体レベル・臓器支配

腹部大動脈の分岐を理解!順番・椎体レベル・臓器支配

腹部大動脈は、解剖学・看護・柔整・リハビリなど医療系国家試験で頻出の血管構造です。T12〜L4の間でさまざまな臓器へ枝分かれし、その分岐順・支配領域・椎体レベルを正確に把握しておくことが重要です。

この記事では、腹部大動脈の主な分岐を図表と語呂合わせでわかりやすく解説し、国家試験の得点源として使えるよう整理します。臨床でも役立つ位置関係やCT画像との対応も交えて紹介しています。

この記事でわかること

  • 腹部大動脈の主な分岐とその順番
  • 各分岐の椎体レベルと支配臓器
  • 国家試験で狙われやすいポイント
  • 語呂合わせによる覚え方
  • 臨床(造影CT・動脈瘤)の基礎知識にも応用可能

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国家資格4種取得、最年少院長

【取得資格一覧】

元大手整骨院グループ20代院長を務める。

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目次

腹部大動脈とは?その基本構造と役割

腹部大動脈とは?その基本構造と役割

腹部大動脈は、胸大動脈が横隔膜を通過した直後(T12)から始まり、第4腰椎(L4)で左右の総腸骨動脈に分かれる大動脈の一部です。腹部の臓器、腎臓、腸管、骨盤、下肢などに血流を供給する重要な血管で、国家試験でも頻出の解剖部位です。

胸大動脈との違いと腹部臓器への血流分配

胸大動脈は心臓から出て上半身(頭・胸部)に血流を送るのに対し、腹部大動脈は下半身(腹部・骨盤・下肢)へ血液を送ります。腹部大動脈からは、以下のような多数の分岐があり、それぞれの臓器に血液を供給します。

  • 消化管(胃・腸)→ 腹腔動脈、腸間膜動脈
  • 腎臓・副腎 → 腎動脈、副腎動脈
  • 性腺(精巣・卵巣)→ 精巣動脈・卵巣動脈
  • 腰部・脊椎 → 腰動脈

腹部大動脈の走行と分岐の全体像

腹部大動脈は、椎体の前面を縦走し、以下のような順序で分岐します。

椎体レベル分岐名主な支配臓器
T12腹腔動脈胃、肝臓、脾臓、膵臓、十二指腸上部
L1上腸間膜動脈小腸、上行結腸、横行結腸前半
L1-L2腎動脈腎臓、副腎
L2精巣/卵巣動脈精巣または卵巣
L3下腸間膜動脈下行結腸、S状結腸、直腸上部
L4総腸骨動脈骨盤臓器、下肢

分岐の順番と椎体レベルをセットで覚えることで、国家試験にも対応できます。

分岐順と椎体レベルを整理しよう

腹部大動脈の分岐は、その高さ(椎体レベル)と順序が試験でも頻出の重要ポイントです。特に医療系の国家試験では、「どの高さで何が分岐するか」「どの臓器がその血流を受けるか」といった知識が求められます。このパートでは、腹部大動脈の主な分岐をT12からL5まで、順番とともに整理し、混乱しやすいポイントを視覚的にも理解しやすいよう解説します。

横隔膜下〜腹腔動脈(T12)

T12の高さでは、まず横隔膜下動脈と腹腔動脈が分岐します。このレベルの分岐は、上腹部臓器の栄養に関与するため、解剖学的にも非常に重要です。

  • 横隔膜下動脈
    ↳左右に分かれ、横隔膜の下側を栄養する
  • 腹腔動脈
    ↳胃・肝臓・脾臓・膵臓・十二指腸上部に血流を供給

特に腹腔動脈は「三分岐」することで知られ、左胃動脈・脾動脈・総肝動脈へと分かれます。試験では、この三つの枝を覚えているかも問われることが多いため注意が必要です。

上腸間膜動脈と腎動脈(L1〜L2)

L1の高さでは上腸間膜動脈が、L1〜L2にかけて腎動脈が左右に分かれます。この部分では消化管と泌尿器系臓器への血流分配が行われています。

  • 上腸間膜動脈
    ↳小腸全体、盲腸、上行結腸、横行結腸の一部を栄養
  • 腎動脈
    ↳左右に分岐し、腎臓と副腎へ血流を送る

上腸間膜動脈は腸間膜の中を走りながら、小腸の大部分と結腸の前半に血液を送る要となる動脈です。一方、腎動脈は太く、CT画像でも判別しやすい血管の一つです。

下腸間膜動脈と腰動脈(L3〜L4)

L3〜L4の高さでは、腸の後半部や体幹部への血流を担う動脈が分岐します。これらの動脈は臨床でも見逃せない位置関係を持ちます。

  • 下腸間膜動脈
    ↳下行結腸、S状結腸、直腸上部に血流を供給
  • 腰動脈
    ↳腹壁筋や脊柱、脊髄周囲の組織に分布

下腸間膜動脈は、腸間膜の後半に位置し、消化管の最終部をカバーします。腰動脈は複数本が左右に分かれ、筋肉や椎体を支えるための重要な血管群です。

最下部の分岐:総腸骨動脈と仙骨正中動脈(L4〜L5)

最下部の分岐は、腹部大動脈がその役割を終え、下肢と骨盤内臓器へ血流を送る段階にあたります。特に動脈瘤などの病変が発見されやすい部位としても知られています。

  • 総腸骨動脈
    ↳左右に分岐し、内腸骨動脈・外腸骨動脈へ分かれる
  • 仙骨正中動脈
    ↳尾骨周辺へ向かう小さな血管で、後腹膜腔を走行

総腸骨動脈の枝である外腸骨動脈は下肢へ、内腸骨動脈は骨盤内臓器や臀部へ血流を送ります。試験では分岐の高さ(L4)と、その後の走行に注目しておきましょう。

覚えにくい分岐を語呂でマスター

腹部大動脈の分岐は数が多く、似たような名称も多いため、暗記が大きなハードルになります。とくに順番と椎体レベルの両方をセットで覚えるには、語呂合わせを上手に使うことが有効です。このパートでは、試験対策に役立つ語呂とその活用法を紹介します。

語呂合わせで分岐順を簡単暗記

腹部大動脈の分岐順を覚えるために、以下のような語呂合わせが活用されています。覚えにくい順番も、リズムの良い語呂で記憶しやすくなります。

  • 「腹腔、上中下、腎生殖、腰の骨、分かれる総腸骨」
    ↳分岐の順番を表現した語呂。上から順に、腹腔動脈、上腸間膜、腎動脈、性腺動脈、下腸間膜、腰動脈、総腸骨動脈を指す
  • 「T12:腹腔、L1:上腸間・腎、L2:性腺、L3:下腸間、L4:分岐」
    ↳高さ(椎体レベル)ごとの分岐をまとめた語呂。覚えるべき高さの目安として有効

語呂合わせは一つに絞らず、複数使っても問題ありません。自分の覚えやすい語感のものを選び、繰り返し声に出して確認するのが定着のコツです。

椎体レベルと血管の高さをセットで覚える

腹部大動脈の分岐を覚える際は、椎体レベルとの対応関係を視覚的に把握することが効果的です。下記に、椎体レベルごとの主な動脈を整理します。

椎体レベル分岐する動脈
T12横隔膜下動脈・腹腔動脈
L1上腸間膜動脈・腎動脈
L2精巣動脈 / 卵巣動脈(性腺動脈)
L3下腸間膜動脈
L4総腸骨動脈
L5仙骨正中動脈(まれにL4)

このように高さと分岐をセットで覚えることで、CT画像や超音波などの臨床的な場面でも、血管の位置をイメージしやすくなります。学習時には、図やマップと併せてこの表を活用すると記憶に定着しやすくなります。

椎体レベルと血管の高さをセットで覚える

臓器別にみる血管支配のまとめ

腹部大動脈から分岐する各動脈は、それぞれ異なる臓器群に血流を送っています。このパートでは、どの動脈がどの臓器を支配しているのかを臓器別に整理し、複雑な対応関係を明確にしていきます。臓器ごとに血管支配を把握することで、解剖学の理解だけでなく、臨床画像の読影にも応用しやすくなります。

腹腔動脈系が支配する臓器

腹腔動脈は、上腹部臓器への血流を一手に担う幹動脈です。その三つの主枝が、それぞれ特定の臓器へ分布しています。

  1. 左胃動脈
    ↳胃の小弯・噴門部を栄養
  2. 脾動脈
    ↳脾臓と膵臓の尾部、胃の大弯も一部
  3. 総肝動脈
    ↳肝臓・胆嚢・胃の一部・十二指腸上部・膵頭部

腹腔動脈系の支配領域は、消化管の上流と関連する付属器官に集中しており、出血や虚血が起こると重篤な臓器障害を引き起こすこともあります。

腸間膜動脈の範囲を明確にする

上腸間膜動脈と下腸間膜動脈は、消化管の中〜下部をカバーする重要な血管です。どこまでが上腸間、どこからが下腸間の領域なのかを正確に理解することが求められます。

動脈主な支配領域
上腸間膜動脈小腸全体(十二指腸下部〜回腸)
盲腸、上行結腸、横行結腸の右2/3
下腸間膜動脈横行結腸の左1/3、下行結腸、S状結腸、直腸上部

この境界線は、腸の解剖学的位置だけでなく、動脈硬化や腫瘍の影響を判断する際にも重要な情報となります。

腎・性腺・脊柱への血流供給

腹部大動脈は消化管だけでなく、泌尿器・生殖器・筋骨格系への血流も担っています。ここでは腎動脈、性腺動脈、腰動脈の分布を確認します。

  • 腎動脈
    ↳腎臓と副腎に分布。腎門部で前後枝に分かれる
  • 性腺動脈(精巣動脈/卵巣動脈)
    ↳性腺へ向かう細長い血管。左は腎静脈に、右は下大静脈に注ぐ
  • 腰動脈
    ↳脊柱周囲、脊髄、腹壁筋に血流を供給

これらの血管は、腹部外科や泌尿器科の手術で誤って損傷しやすいため、位置と走行を正確に理解しておく必要があります。

まとめ|腹部大動脈の分岐を試験と臨床で活かす

この記事では、腹部大動脈から分岐する主要な動脈について、順番や椎体レベル、臓器との対応関係まで整理してきました。語呂合わせや表、リストを通じて、覚えにくい情報を視覚的・音的に記憶しやすくする工夫も取り入れました。

解剖学的な位置関係と臓器支配を理解することは、単なる暗記にとどまらず、臨床における読影力や診断力の向上にもつながります。試験勉強では、語呂や表を活用しながら繰り返しアウトプットすることが重要です。

また、CTやエコー画像の中で血管の走行や位置を的確にイメージできるようになると、実践的なスキルも身につきます。解剖図や臓器マップとセットで復習することで、記憶の定着率も高まるでしょう。

まずは「T12〜L4までの分岐」と「支配臓器の組み合わせ」を重点的に押さえ、苦手な部位は語呂合わせなどを使って克服してください。解剖を味方につければ、試験も臨床も怖くありません。自信をもって取り組んでいきましょう。

  • 次のうち、腹部大動脈の「側方枝(外側枝)」に分類されるものをすべて選べ。

A. 腎動脈
B. 精巣(卵巣)動脈
C. 腹腔動脈
D. 上腸間膜動脈
E. 下腸間膜動脈

  • 上腸間膜動脈(SMA)の分岐高位として最も正しいのはどれか。

A. T12
B. L1
C. L2
D. L4

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