整骨院を経営する上で、避けては通れないのが保険請求の適正管理です。
知らずに行っていたことが「不正請求」と見なされ、多額の返還や行政処分につながる事例も少なくありません。「うちは大丈夫」と思っていた整骨院が調査を受け、経営継続が困難になるケースも存在します。
この記事では、整骨院で行われる不正請求の具体例や、それがどのように発覚するのか、調査の流れとそのリスク、そして正しく保険請求を行うために押さえておくべきポイントを徹底解説します。
実例や対策を通じて、経営者やスタッフが安心して日々の業務に向き合えるように、実践的な知識を提供します。
このページでわかること
- 整骨院で行われやすい不正請求の具体例
- 監査・調査が入るきっかけと発覚の仕組み
- 不正請求による処分内容と経営リスク
- スタッフ教育・記録確認の注意点
- 正しい保険請求の基本と再発防止策
整骨院における不正請求とは

整骨院の不正請求とは、療養費制度を悪用して、実際とは異なる内容で保険請求を行う行為を指します。
これは、故意・過失を問わず「実態と異なる請求」が行われた場合に該当するため、知らないうちに違反してしまうケースもあります。
不正請求の定義とよくある事例
不正請求には、意図的な詐欺行為だけでなく、うっかりミスや勘違いも含まれる可能性があります。以下のような事例が多く見られます。
- 架空請求
↳患者が来院していない日に施術したとして請求 - 部位水増し請求
↳実際に施術していない部位をレセプトに追加 - 重複請求
↳同一の負傷部位に対し、同日に複数請求 - 初検料の乱用
↳数日空いただけで初検扱いにし、何度も請求
うっかりでも不正?故意・過失の違い
不正請求は、悪意がなくても「過失」で認定されるケースがあります。
たとえば、施術記録と請求内容に齟齬があると、調査で「不正」とされる可能性があるため、毎回の記録と請求の整合性確認が重要です。
新人・外注のレセプト処理にも注意
新人スタッフや外注のレセプト業者に業務を任せきりにしていると、知識不足や確認漏れから不正請求が発生しやすくなります。
管理者が最終確認を徹底する体制が求められます。
これらの例は、整骨院における日常的な業務の中で起こりうるものばかりです。不正を未然に防ぐには、正確な知識と意識の共有が鍵となります。
不正請求がバレる仕組みと調査の実態
整骨院での不正請求は、保険者や支払基金、厚生労働省などの複数のルートからチェックを受け、様々な形で発覚します。
単なる書類上の調査にとどまらず、現地訪問や患者への直接確認なども行われます。
監査・実地指導・個別調査の違い
不正の疑いがある場合、以下のような調査が実施されます。
調査種類 | 主な内容 | 対象となるケース |
---|---|---|
監査 | 行政による強制力を持った調査 | 重大な不正が疑われる場合 |
実地指導 | 施術内容や記録内容のチェック | 定期的または指摘に基づく |
個別調査 | レセプトの疑義照会・患者照会 | 請求内容に不自然な傾向がある場合 |
よくある「バレた理由」と実例
不正が発覚する主な理由は、以下の通りです。
- レセプト内容と施術記録に不整合
↳カルテと請求の齟齬で疑義が発生 - 患者からの通報
↳実際の施術と請求内容の違いに気づいた患者からの報告 - 頻繁な初検料の請求
↳不自然な頻度で初検料が請求されている
調査が入ったときの対応マニュアル
調査が入った際に慌てないためには、以下の点を準備しておくことが重要です。
- カルテとレセプトの内容を日々一致させておく
- スタッフ全員に記録の重要性を教育
- 患者からの問い合わせに誠実に対応する姿勢を持つ
調査は突然行われることもあり、「知らなかった」では通用しません。常日頃から誠実な運営と記録管理を徹底することが最大の予防策です。
不正請求が発覚した場合のリスク
不正請求が発覚した際には、行政処分だけでなく刑事罰や社会的信用の失墜など、多大なダメージを受けることになります。
過去には整骨院の閉院や柔道整復師資格の停止・取り消しに至った事例も存在します。
返還命令・行政処分・刑事罰の内容
不正が確定した場合、以下のようなペナルティが課される可能性があります。
処分内容 | 概要 | 例 |
---|---|---|
療養費返還 | 過去数年分の不正請求額を返金 | 3年間で300万円超の返還命令 |
行政処分 | 業務停止や保険取扱い停止など | 6ヶ月間の保険請求停止 |
刑事罰 | 詐欺罪による罰金・懲役刑 | 懲役1年6ヶ月・執行猶予付き |
信用失墜と経営への影響
不正請求が報道などで公になると、地域社会からの信頼を一気に失います。
結果として患者数の激減、求人応募の減少、取引先との関係悪化といった経営的な打撃を受けるケースも少なくありません。
スタッフへの波及と離職のリスク
院の経営者が不正に関与していた場合、スタッフにも精神的なショックや不信感が広がります。
「不正に加担させられたのでは」と感じた従業員の離職が相次ぎ、院の運営が立ち行かなくなることもあります。
実例:スタッフの証言により発覚したケース
ある整骨院では、レセプト内容の不一致を疑ったスタッフが院長に確認をとったが対応が曖昧だったため、外部機関に相談。
結果として監査が入り、不正が発覚し療養費約200万円の返還命令を受け、1年間の保険請求停止処分となったという報告があります。
不正がもたらす影響は、金銭だけに留まらず、職場全体の雰囲気や人間関係、将来の信用にまで及ぶ点を認識しておく必要があります。
不正を未然に防ぐための対策
整骨院において不正請求を避けるためには、「知らなかった」「気づかなかった」を防ぐ仕組みづくりが欠かせません。以下では、具体的な対策を紹介します。
スタッフ教育と院内ルールの徹底
院内全体での認識を統一することが、不正防止の第一歩です。
- 毎月のミーティングで法令遵守とレセプト処理の重要性を共有
- 入社時に「保険請求ルールマニュアル」を配布
- スタッフが疑問を感じた際にすぐ相談できる体制づくり
日々の記録とレセプト確認のポイント
記録が雑になると、結果的に誤請求や不正に繋がりやすくなります。
- 施術内容・部位を記録し、患者との整合性を確認
- レセプトは毎月、ダブルチェックを実施
- 外注業者を使う場合でも、最終確認は院側で行う
法改正・通知の情報収集と反映方法
最新のルールに即した運営ができていなければ、不正扱いされる危険があります。
- 厚生労働省・柔整業協会の通知を月1回以上確認
- 業界ニュースサイトやレセコン会社の情報も活用
- 改正があった場合は院内で勉強会を実施し、即日対応
不正を防ぐには、日々の小さな確認と教育の積み重ねが欠かせません。経営者自身が率先して透明性を高めることが、スタッフの意識向上にも繋がります。
まとめ|整骨院の不正請求を防ぐためにできること
この記事では、整骨院における不正請求の実態とその発覚の仕組み、そしてバレた際のリスクと対策について解説しました。
不正請求は故意だけでなく、知識不足や確認漏れからも起こり得るため、全スタッフが正しい請求方法を理解し、日々の業務に活かすことが重要です。
不正が発覚すれば、経営者自身だけでなく、働くスタッフや患者にも大きな影響を与えることになります。
療養費の返還、行政処分、刑事罰、さらには社会的信用の失墜といった事態に発展する可能性を常に意識しなければなりません。
未然に防ぐためには、スタッフ教育の徹底、記録とレセプトの正確性の保持、最新法令への迅速な対応が必須です。
また、不安があれば専門機関への相談や、他院の運営を参考にすることも有効です。
経営者としての責任感と誠実な運営姿勢が、不正を遠ざけ、患者やスタッフからの信頼を育む基盤となります。今一度、院内の体制を見直し、正しい保険請求に努めましょう。
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