整骨院の経営は、ただ開業すればうまくいく時代ではありません。少子高齢化や保険制度の見直し、競合院の増加により、これまでの経営スタイルでは通用しなくなってきています。
そんな中で「収益が伸びない」「リピート率が低い」「スタッフが定着しない」といった課題を抱える経営者も多いのが実情です。
この記事では、整骨院経営に必要な知識と実践的な改善ポイントを体系的に紹介します。
収益構造の見直し、集客の仕組み、人材育成、財務改善など、経営のあらゆる要素を網羅し、持続可能な経営に近づけるためのヒントを提供します。
このページでわかること
- 整骨院の収益構造と保険・自費のバランス
- 開業前に検討すべき準備や資金計画
- 集客とリピートを生む施策とツール
- スタッフの教育・評価・離職防止の仕組み
- 収益性と持続性を両立するための経営改善戦略
整骨院経営の基本を理解しよう

整骨院を成功させるには、経営の「基本構造」を正しく理解することが欠かせません。
ここでは、収益の仕組みや開業時の準備、成功院の共通点について解説します。
整骨院の収益構造(保険・自費の割合)
整骨院の収益は大きく分けて「保険収入」と「自費収入」に分かれます。
収益項目 | 特徴 | 注意点 |
---|---|---|
保険収入 | 骨折・脱臼・捻挫などの急性外傷が対象 | 算定ルールが厳格/返戻リスクあり |
自費収入 | 慢性疾患・美容整体・産後矯正など | 価格設定・営業力がカギ/単価は高い |
比率としては「保険7:自費3」から「保険5:自費5」が理想とされ、近年は自費施術の割合を高める院が増えています。
開業前に必要な準備と資金計画
整骨院開業に必要な準備項目とおおよその費用感をまとめると以下の通りです。
- 物件取得費(保証金・前家賃など)
↳約100〜200万円 - 内装・設備工事費
↳約300〜600万円 - 施術機器・備品
↳約100〜300万円 - 広告宣伝費
↳約50〜100万円 - 運転資金(半年分程度)
↳約200〜400万円
初期投資の総額は800万〜1,500万円が目安。資金計画の段階から金融機関や税理士に相談しておくのが安心です。
成功する整骨院の特徴とは?
成功している整骨院には共通するポイントがあります。代表的な特徴を以下にまとめます。
- 地域密着型でリピーター比率が高い
↳患者との信頼関係を重視した接遇 - Web・SNS集客ができている
↳Googleビジネス・Instagram・LINE予約を活用 - 自費施術に力を入れている
↳美容矯正や産後ケアなど単価の高い施術を導入 - スタッフ教育が仕組み化されている
↳技術・接遇・営業を継続的に指導
単に施術技術が高いだけでなく、「経営視点」で仕組みを整えている院が長期的に伸びています。
集客とリピート率を高める戦略
整骨院経営で安定した収益を確保するためには、「新規集客」と「リピーター確保」の両方を強化する必要があります。
ここでは、集客施策や接遇の工夫、実際に活用されているツールやサービスを紹介します。
ターゲット層に合わせた集客施策
まずは、自院が「誰を集客したいのか」を明確にした上で施策を展開する必要があります。
- 地域密着型のチラシ配布・ポスティング
↳高齢者や主婦層に効果的 - 交通事故治療特化のWebページ作成
↳急患対応を探している層を獲得 - 美容整体・骨盤矯正などの専門メニュー訴求
↳20代〜40代女性をターゲットに
施術メニューとペルソナの一致が、集客効率を左右します。
SNS・Googleビジネスの活用方法
スマホで情報を探す人が増えている今、WebとSNSの運用は必須です。
ツール | 活用方法 | 具体的なサービス |
---|---|---|
Googleビジネスプロフィール | 地図・検索結果に表示され、口コミ管理もできる | Googleマップ、ローカルSEOツール(MEOチェキ) |
ビフォーアフター写真や院内の雰囲気を視覚的に訴求 | Canvaで投稿画像作成/予約連携はLINEと併用 | |
LINE公式アカウント | 予約受付、再来院通知、クーポン配布が可能 | LINE予約、Lステップ(自動応答・配信) |
とくにGoogleマップ対策(MEO)は費用対効果が高く、集客に直結します。
リピーターを生む接遇・サービスの工夫
1回きりの来院では売上は安定しません。継続的に通いたくなる仕組みづくりが重要です。
- 初回来院時のカウンセリング強化
↳「この院なら信頼できる」と思わせる初動がカギ - 通院プランの提案と目標設定
↳来院の必要性と成果を視覚化(カレンダーやファイル活用) - 定期フォロー・予約のリマインド
↳LINE配信やSMSで次回来院を促す
また、以下のようなCRM(顧客管理)ツールの導入も有効です。
CRMツール | 主な機能 |
---|---|
リピッテ | 予約管理・顧客カルテ・売上分析・LINE連携 |
Airリザーブ | 予約台帳管理・WEB予約受付・顧客管理 |
SELECTTYPE | 予約フォーム・LINE通知・クーポン配布 |
これらの施策を組み合わせることで、新規集客とリピーター維持の両方を効率的に実現できます。

人材と運営の安定化が経営の鍵
整骨院の経営を長期的に安定させるには、スタッフの採用・教育、業務の効率化、離職防止といった「人」に関わる要素が極めて重要です。
ここでは、現場で実践されている具体策や管理ツールも紹介します。
スタッフ採用・教育・評価制度
優秀な人材を確保し、成長させることが整骨院の品質と収益に直結します。以下のようなポイントを押さえると採用・教育がスムーズです。
- 採用基準の明確化
↳技術力よりも「人柄・対話力」を重視 - 新人研修の体系化
↳施術手順・接遇・カルテ記載などを動画マニュアル化 - 定期評価制度の導入
↳明確な昇給基準を設けてモチベーション維持
LINE WORKSやGoogleドライブで共有資料を整備しておくと、新人育成も効率的になります。
業務効率化ツールと院内マネジメント
煩雑な予約や顧客対応は、ツールの導入で大幅に効率化できます。
ツール名 | 用途 | 特徴 |
---|---|---|
リピッテ | 顧客管理・LINE予約・売上分析 | スマホでも使いやすい/カルテ連携 |
Airレジ | 会計・レジ締め・売上データ管理 | レジ業務の手間を削減/決済端末と連動 |
Googleカレンダー | 予約管理・シフト共有 | スタッフ間のスケジュール共有が簡単 |
これらのツールを連携させることで、施術以外の業務にかかる時間を最小化できます。

離職防止のための職場づくり
整骨院は小規模な組織が多いため、職場の空気がスタッフの定着に直結します。
- 定期面談の実施
↳業務の悩みや希望をヒアリング - 成果に応じた報酬制度
↳インセンティブや歩合制でやる気を引き出す - シフトの柔軟性を確保
↳家庭や副業との両立を支援
離職が減れば教育コストも下がり、院の雰囲気も安定します。経営者が一人ひとりの「働きやすさ」に配慮する姿勢が何より重要です。
整骨院経営の改善とステップアップ
整骨院の経営は、開業後も常に見直しと改善が求められます。
収支管理や施術内容の見直し、さらには複合型経営など、柔軟な対応が経営安定と成長の鍵となります。
月次KPI分析と数値で見る経営改善
経営改善の第一歩は「現状を数値で把握すること」です。KPI(重要業績評価指標)を設定し、月単位で分析・改善を重ねましょう。
KPI項目 | 目安 | 改善のヒント |
---|---|---|
来院数 | 月300人以上 | チラシ・SNS・口コミ強化 |
リピート率 | 70%以上 | フォローアップ・定期提案 |
客単価 | 4,000円以上 | 自費メニュー導入・回数券 |
スタッフ1人あたり売上 | 50万円以上 | 施術時間最適化・教育強化 |
数字に基づいた経営判断をすることで、感覚に頼らない確実な改善が可能になります。
自費施術の導入と価格戦略
保険診療だけでは利益が頭打ちになりがちなため、自費施術の導入は避けて通れません。導入にあたっては、施術メニューと価格のバランスが重要です。
- 美容整体(5,000〜8,000円)
↳若年女性層への訴求が強い - 産後骨盤矯正(4,000〜6,000円)
↳子育て世代への長期提案が可能 - スポーツコンディショニング(3,000〜5,000円)
↳学生・社会人アスリートに特化
価格は施術時間と専門性で設定し、パッケージや回数券で継続を促す工夫をしましょう。

回数券
他業種との連携・複合型経営の可能性
単独経営だけでなく、他業種との連携で幅広い層を取り込むモデルが注目されています。成功事例をいくつか紹介します。
連携先 | 業種 | 特徴 |
---|---|---|
KAIZEN BODY | 美容整体+整骨院 | 女性客中心、自費率高 |
介護事業所 | 訪問リハ+通所併設 | 地域包括ケア連携が可能 |
パーソナルジム | トレーナー常駐 | 姿勢改善・ダイエットニーズに対応 |
地域や患者層に応じて最適な連携先を選ぶことで、売上の安定化と差別化が図れます。
まとめ|整骨院経営を安定・成長させるために
整骨院経営には、施術スキルだけでなく、収益管理・集客戦略・スタッフ育成といった「経営者」としての視点が不可欠です。
この記事では、保険と自費のバランスを取る収益構造、来院数と単価を上げる集客戦略、スタッフを定着させる運営方法、そしてKPIを活用した数値管理まで、多角的に成功する整骨院の運営方法を解説しました。
経営は常に改善の連続です。現状を正しく把握し、少しずつでも改善を積み重ねることで、経営は確実に安定していきます。
特に、自費施術の導入や業種連携などは、これからの整骨院に求められる変化への対応策として有効です。
まずは、自院の現状を「数字」で把握することから始めてみてください。明確な指標を持つことで、経営判断が速くなり、効果的な対策を打ち出すことができます。
スタッフと一緒に学び、改善し、より良い院を目指すことが、患者からも信頼される第一歩です。
整骨院経営の先には、地域の健康を支えるというやりがいがあります。ぶれずに、でも柔軟に対応しながら、理想の院づくりを進めていきましょう。
コメント